
企業価値・株式価値・手取りを分ける
金属加工会社の価値は、設備の簿価や「利益の何倍」だけでは決まりません。将来も続く加工利益と、その利益を生む設備・技能・取引を確認します。評価額は交渉の出発点であり、売却価格の確約ではありません。
- 事業全体の価値をみる企業価値(EV)と、株主に帰属する株式価値を区別します。現預金、借入、非事業用資産など、評価・調整に含める項目と基準日をそろえます。
- 譲渡対価は、評価に加えて引継ぐ範囲、運転資金、設備更新、契約条件などを踏まえ、当事者間で合意する金額です。
- 株式譲渡では通常株主が、会社による事業譲渡では譲渡会社が対価を受け取ります。株主個人の手取りは税金・費用等にも左右され、売却価格と同額とは限りません。
設備を持つことと、利益を再現できること
切削・板金・プレス・溶接・金型・表面処理では、同じ売上でも工程や費用構造が異なります。次の3点を、台帳・契約・実績で照合します。
設備・金型の所有と負担
自社所有、リース、顧客からの貸与・預かりを分けます。金型が工場内にあるだけで自社資産とは判断できません。保守・更新費、残債、移設・返却条件、量産終了後の保管や補給品対応の費用も確認します。
年式だけでなく、必要な精度を保てるか、稼働余力や修繕履歴があるかを確認。土地・建物が会社所有か、代表者個人の所有・賃貸かも整理します。
受注・原価・仕掛品
確定注文と内示を分け、品番ごとに材料費、段取り、加工時間、歩留まり、手直し、熱処理・めっき等の外注費を確認します。受注残が多くても、完成までの採算や検収条件によって評価は変わります。
材料・仕掛品・完成品は、数量だけでなく滞留や仕様変更、所有者を確認。支給材の混在、材料価格の転嫁状況、主要顧客への依存も整理します。
図面・品質の引継ぎ
自社作成と顧客支給の図面、CAD/CAM・NCプログラム、加工条件を区分し、利用権と開示範囲を確認します。データを持っていることと、第三者へ自由に渡せることは同じではありません。
検査・校正、材料証明、ロット記録、不適合・返品の履歴から品質を確認。拠点・工程・外注先の変更で顧客の承認や再評価が必要か、契約・品質協定に沿って整理します。
誰が、どの加工・検査を引き継ぐか
代表者やベテランに依存する段取り・難削材加工・検査・顧客対応を洗い出します。技能マップ、作業標準、教育記録を使い、引継ぐ人員と期間、代表者の関与、外注先との関係を具体化します。雇用や工場の継続などの希望は、価格と合わせて交渉する条件です。
株式譲渡では法人は同じでも、支配権変更時の通知・承諾条項などを確認します。事業譲渡では対象資産・契約・人員を特定し、必要な同意や手続を個別に確認します。事業譲渡で労働契約を移す際は、対象の従業員の真意による承諾が必要です。技能や契約が全て自動で移るとは考えません。
初期診断で整理する6つの資料
全てがそろう前でも相談できます。まず手元の資料から不足を確認し、顧客名・図面・個人情報などの機密資料は、開示先と目的を確認して段階的に共有します。
財務・資金
直近の決算書・試算表、借入・現預金、資金繰り、役員関連取引。一時的な損益と継続利益を分けます。
受注・採算
顧客・品番別売上、注文/内示、原価、仕掛品・在庫、検収・価格改定条件。確定度と採算を並べます。
設備・金型
設備・固定資産・リースの一覧、貸与金型・支給材の台帳、保守履歴、工場の所有・賃貸関係。
技術・品質
図面やプログラムの管理状況、利用許諾・秘密保持、検査・校正、不適合対応と顧客の品質要求。
人員・技能
人員構成、担当工程・保有技能、就業条件、教育体制。引継ぎが必要な役割と代替可能性を整理。
外注・工場管理
外注工程の仕様・契約、代替先、薬品・排水・廃棄物や土地利用の履歴。工程に応じた確認範囲を整理。
工場の環境調査や許認可の確認範囲は、工程・設備・土地の状況と譲渡方法によって異なります。初期診断の後、必要に応じ専門家による調査を行い、設備更新や品質対応などの費用・責任分担を条件に反映します。概算から最終契約までの進め方は、金属加工会社のM&Aの流れで確認できます。
売却するか未定でも、概算価値の確認から始められます。
会社名非公開での初期相談に対応。譲渡企業様の当社M&A支援手数料は、成功報酬まで0円です。税金や外部専門家への費用等は別途確認します。
